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2026.03.03
お知らせ

非営利会計の共通化は実現するか——日本公認会計士協会と意見交換

公益法人、NPO法人、社会福祉法人——法人格が異なるだけで会計基準が別々に存在する現状を、どう乗り越えるか。2026年3月3日(火)に行われた全国公益法人協会と日本公認会計士協会の意見交換会では、非営利会計の共通化とガバナンスの在り方をめぐり、率直な議論が交わされました。

公益法人の会計実務に精通した専門家であっても、社会福祉法人の決算書を前にすると勝手が違います。こうした場面は珍しくありません。法人類型ごとに独自の発展を遂げた会計基準は、いわば方言のようなもので、隣の地域に行けば通じない。結果として、非営利会計に携わる人材の専門性が正当に評価されにくい構造が生まれています。

日本公認会計士協会が検討を進めている非営利組織モデル会計基準は、この断片化を解消しようとする構想です。全国公益法人協会は同日14時から約1時間、日本公認会計士協会本部(東京・千代田区)を訪問し、モデル会計基準の方向性とガバナンスの在り方について意見を交わしました。日本公認会計士協会からは菅田裕之常務理事、大橋佳之非営利法人委員会委員長、松前江里子研究員、鈴木勝非営利グループ長、正川勲非営利グループ主査が、全国公益法人協会からは出口正之『月刊公益』編集委員長(国立民族学博物館名誉教授)、桑波田直人専務取締役、高野恭至常務取締役、岩見翔太主任研究員の4名が出席しました。

非営利会計の共通化は実現するか——日本公認会計士協会と意見交換

法人格の壁を越える会計基準は可能か

意見交換の第一のテーマは、日本公認会計士協会が検討を進める非営利組織モデル会計基準の構想です。

同基準は、公益法人、NPO法人、社会福祉法人など法人格の違いを超えた会計処理の共通化を図るとともに、小規模法人にも配慮した簡素化の方向性を打ち出しています。法人格が異なっても財務情報を比較できるようになれば、会計専門人材の知識を法人格横断的に活かせる基盤が整います。

全国公益法人協会からは、この方向性への賛同を表明しました。自治体の外郭団体や職員数名規模の法人が多い全国公益法人協会の登録法人の実態を踏まえれば、バラバラな基準を共通化する意義は大きい。非営利会計に携わる人材の専門性を高め、その評価を底上げする契機になり得るからです。

ガバナンスの転換——誰に向けて情報を発信するのか

第二のテーマは、非営利組織のガバナンスの在り方でした。

日本公認会計士協会からは、従来の規制・監督を目的とした情報開示から、ステークホルダーとの対話を目的とした開示への転換が提唱されました。寄付者、受益者、地域社会といった多様な利害関係者に対し、活動成果や経営状況を法人みずから発信していく姿勢が求められるという考え方です。

この方向性に賛同しつつも、全国公益法人協会からは現場の実情を踏まえた意見を述べました。対話すべきステークホルダーが誰であるのか、そもそも明確に認識できていない法人は少なくありません。理念を現場に根づかせるには、対話の実践に成功している法人の具体例をロールモデルとして示すことが欠かせないのではないか。こうした意見とあわせて、会計士協会の今後の取組みに協力していきたい旨を表明しました。

予算管理という見落とされがちな論点

全国公益法人協会はさらに、非営利法人にとっての予算管理の重要性を指摘しました。営利企業と異なり、非営利法人のガバナンスは予算による規律が根幹を成します。法人類型を超えた会計基準を構想するのであれば、予算管理についても非営利法人に共通する指針を示すべきではないか。日々現場の運営に向き合うなかで感じている問題意識からの提起です。

公益法人会計基準の適用範囲をめぐる要望

公益法人会計基準に特有の論点として、基準の適用範囲についても意見を述べました。公益法人会計基準は、会計監査人を設置している公益法人にはその全文が適用されますが、会計監査人を設置していない公益法人や移行法人などには一部が適用されます。適用されないわけではないものの全文が適用されるわけでもない——この中間的な位置づけにある法人にとって、具体的にどの規定がどのように適用されるのかは必ずしも明確ではなく、現場の実務で判断に迷う場面が少なくありません。全国公益法人協会からは、こうした法人における適用関係を整理した指針等を示していただきたい旨の要望を行いました。

国際的な視座からの提言

出口編集委員長からは、モデル会計基準の策定努力を評価したうえで、学術的・制度論的な観点から意見が述べられました。国際的にはIPSAS(国際公会計基準)のみならず、INPAS(国際非営利会計基準)も参照すべきであるとの指摘です。非営利セクター固有の会計基準を国際的な文脈のなかに位置づける作業は、モデル基準の説得力を高めるうえで避けて通れないでしょう。

継続的な対話の先に

非営利会計の断片化を解消し、ガバナンスの在り方を転換する。いずれも一朝一夕に実現する課題ではありません。全国公益法人協会は日本公認会計士協会との対話を継続し、公益法人をはじめとする非営利法人の現場の声を届けてまいります。とりわけ、小規模法人が新たな基準やガバナンスの枠組みに無理なく対応できる制度設計を、粘り強く求めていく方針です。

文責 桑波田直人


【本件に関する問い合わせ先】
全国公益法人協会 
TEL:03‐5577‐2023
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